Long season

会社にも人間みたいにライフサイクルがあるらしい。
松野下がデザイナーとして入社したのはちょうどネアンデルタールの青年期の頃だ。
新たにいくつか法人を立ち上げ、デザイナーやプロデューサーがそれまでより一段と増え、専門学校や海外からインターンの受け入れやオフィスの増床、社員旅行など目まぐるしく変化していく毎日と会社がどんどん広がっていく感覚にある種の高揚感を覚えていた時期だと思う。

アメリカのバイカー映画に必ず出てくるいい相棒みたいな「髭」がトレードマーク。
見た目の世田谷感というかテラハ感に違わず、均整の取れた洒脱なデザインをした。入社当初デザイン実務のキャリアはゼロに等しかったが、7年半の在籍期間にデザイナーとしてとても立派に成長した。NHKのBS4Kやカラムーチョやスコーンのロゴとかうちの会社の新しいロゴには特に松野下らしさが出ている。

コロナ禍を経て会社の環境も働き方もあの頃とはずいぶん様変わりした。贅沢すぎるオフィスもないし人もだいぶ少なくなった。
これから松野下はとあるアウトドアショップで自社のwebコンテンツやデザインなどに携わるため、ネアンデルタールを卒業する。7年半もやってればそりゃ新しいことやりたくもなるよなあと思う。昔は社員が退社する度に喪失感とか敗北感でいちいち感傷的な気分になったものだけど、今は部下の成長を誇らしく思えるし、若者にとっては長く貴重な7年半を一緒に過ごしてくれたことに感謝したい気持ちでいっぱいだ。

卒業していった仲間と新しい関係性で新しい仕事に取り組む機会が増えてきた。
場所と時間に縛られない働き方にもすっかり慣れた。
大きな船から見える景色も小さなボートから見る景色も所詮同じ海だから、そんなに変わっていない。
あの頃に比べ僕の髪と髭はだいぶ白くなリ、会社も壮年期にふさわしい知恵と軽さを手に入れたようだ。

ネアンデルタール 石井 原