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NEANDERTAL CASE STUDY – VOL.1 湖池屋 – #2
第2回 スペシャルゲスト!社長登場
3回に渡ってお届けする特別シリーズの第2回。
前回はカラムーチョ、すっぱムーチョのリニューアルを中心に、定番ブランドをリニューアルすることの難しさなどをお話ししました。
第2回の今日は、まさかのスペシャルゲスト、佐藤章社長がご登場!トップは今回のリニューアルをどう見たのか?いまの時代にメーカーが果たすべき役割とは?若者たちへ愛あるダメ出し!メモを取る手が止まらない、濃厚濃密な30分となりました。
▼第1回はこちら
http://neandertal.jp/journal/10994/
<ご参加いただいた湖池屋マーケティング部の方々> | |
ムーチョチーム | |
加藤さん(課長) | |
小林さん(ブランドリーダー) | |
宮崎さん / 平野さん | |
スコーンチーム | |
下阪さん(課長代理) | |
小浜さん / 田坂さん |
–– ここで佐藤社長が登場!実は社長と石井は何度も一緒にお仕事をしていて「章さん」「ゲンちゃん」と呼び合う仲です。
石井 あっ、お久しぶりです!ご無沙汰してます!
佐藤 今日なに~。
石井 や、みなさんをちょっと、取材しに来たんです。
佐藤 そお?久しぶりだねえ。いいじゃんこれ、新生ムーチョ。
石井 ありがとうございます。
佐藤 さすが。
石井 いまそこらへんの裏話をしていて・・・ほら最初はあの、僕がやってるって内緒のご相談受けてて。
佐藤 またろくなことしないねえ。
加藤 いやいやいや。
佐藤 まあだけどカッコよくなったよ。
石井 ありがとうございます。
佐藤 こうして現代的になってくれればさ、カラムーチョが再ブレイクするときの、ベースにはなってくれる気がするな。うん。まあだけど、よく思いついたなあ。
石井 いや、これはだから、いまも話してたんですけど定番商品で35年売れてる商品だから、どこまで変えていいのか、何を変えないべきなのか。
佐藤 だからお客さんがさ、どうしてほしいのかを、なんて言うんだろうなあ、サイレントマジョリティーの声を聞くっちゅうか。
石井 元のパッケージに対するファンの支持は固くて、実は変えられない点も多かったですよね。かと言って守り過ぎてもユーザーは拡がらないし。
佐藤 これまでに何度変えようとしてもさあ、調査でダメ、ダメって言われ続けてきたから。でも今回は調査聞かなくても見た瞬間に、これなら大丈夫なんじゃないのかなって感じはしたよ、正直に言うと。
小林 「やられた!」って言ってましたね。
佐藤 そんなこと言ったかなあ。
佐藤 これは、プレゼンしてもらったままなんにもしなかったよな、直すことがないっていうか。ブランドイメージとぴったり合ってたんじゃないですかね。
石井 元気みたいなことをギュッと凝縮してる。
佐藤 うん、だからこう、「チャージする食べものだ」っていうお客さんの裏の声と、やっぱりラテン気質というか、自走する気持ちみたいな。
小林 踊り出しちゃう感じ。
佐藤 そうそう、そういうのがうまく表現されたんで、ユーザーもこれならカッコいいとかいまっぽいとか思ってくれたと、信じてるんですけどね。
石井 ありがとうございます。
佐藤 次の課題としては、カラムーチョのコミュニケーションてどう考えるんだろうってのは実は僕の中にはあるけどね。カラムーチョって言ったら「ヒー」しかないわけじゃない。それ以外のコミュニケーションしても実はあまり効かない。だけど、そんなことはなくてさ、本当の現代的なコミュニケーションは、なにかあるはずなんだよ。
石井 必ずしもコマーシャルではないような気もしますね、そこにあるのは。
佐藤 うん、それもあるかもね。答えはまだわからないからさ、トライ&エラーになるのか、そのあたりが課題かなあ、今後のね。
石井 そんなにいまコミュニケーションはやってないじゃないですか。
佐藤 やってないね。
石井 それなのに、カラムーチョの存在感をなんとなくみんながわかってるっていうのは、やっぱりすごいですよね。
佐藤 褪せないんだよな〜。何故なんだろう。この答えがわかり、じゃあどうしようっていうアクションプランというかエグゼキューションができてくると、ほんとは強いよね。これに似てるものはなにかあんのかい?
石井 存在としてですよね。お菓子じゃなくて、世の中にあるいろんなものの中で、カラムーチョ的なもの。
佐藤 すっぱムーチョだって難しいブランドだよ。すっぱムーチョを嫌いって言う人は好きな人よりも多いのに、すっぱムーチョを大好きなファンだけで支えられてるっていう点では、これもまた稀有だしさ。
石井 うんうん。
佐藤 なんかね、すごいキワに居る気がするのよ。で、それがいいんだと。キワやオタクがセンターを張る時代ってよく言うでしょ。だから、センターに乗せる日がいつか来るって思ってるんだけどね、シニアブランドマネージャーとしては。
石井 シニアブランドマネージャー(笑)。・・・みんな黙っちゃったじゃないですか。ここは議論が活発になる瞬間のはずなんだけどなあ。
佐藤 なんで入って来ないの。
石井 え、普段どんな感じで社員とはお話ししてるんですか?僕らには見えてこないじゃないですか。
小林 いまおっしゃったような話をいつも侃侃諤諤と、やっています。週3回くらい社長室にお邪魔して、いろんなご相談をして。
下阪 逆に社長が来てくださったりね。
小林 マーケ部のあるフロアにふいに降りてきてくださったり、社員食堂でも今日もお隣で一緒にごはん食べましたし。
佐藤 なんかつまんねえ話してんなあ。
石井 いやおもしろいです(笑)。
小林 そんな感じで、距離近くやっております。
佐藤 まだまだもっと自分の意見があっていいと思うし。正直だって、僕らジジイよりもさ、若い子のほうがカラムーチョはわかってなきゃおかしいしさ。
小林 みんなわかってる自負はあるよなっ。
宮崎 はっ、はい。
佐藤 辛口ブームは間違いなくこのカラムーチョから起きてるんだよね。このあとに辛口のビールが出て、キムチとか、辛いものを好んで食べるような習慣がついたのってそっからだからさ。いまやもう、韓国グルメとかいろいろ溢れてきてるけど、これからどういう展開を見せるのか、あるいはそのムーブメントを、湖池屋から起こしていかないといけないっていう自負を、持ってますけどね。
石井 例えば同じポテトスナックで、じゃがいも心地とかと、ムーチョは結構真逆の存在じゃないですか。
佐藤 そうね。
石井 なんとなく、時代的にはああいう本質的なものを求めるのが主流になる気もしていて。そのときにカラムーチョの存在感ってすごく難しいというか、時代が求めているものと逆になっているような、その向かい風は感じるんです。炭酸飲料にも近いのかな。みーんな水を飲んでて、無糖の炭酸飲料にシフトしていってて、結構クセになるような、例えばコーラって今はちょっと世の中的には厳しいかもねっていうふうになっていってるときに、カラムーチョの存在意義はやっぱりすごく難しいですよね。
佐藤 いまゲンちゃんが言ってたじゃがいも心地だとか、ものの本質を求めて、プリミティブなね、方向に戻っていくっていうときに、カラムーチョの役割はなんぞやと、こういう質問だろうけど。
石井 うん。
佐藤 さっきの飲料の話で例えると、みんなが水や無糖の炭酸飲料にシフトしているからには、当然各社がそういう商品を増やそうと考えるよね。でもそうすると結果なにが起きるかっていうと、市場が縮小してしまうんだよ。有甘飲料、無甘飲料っていうと、お金払って買うならやっぱり本来は水じゃなくて有甘飲料なんだけれども、その市場が縮小してくってことは大変なことなんだよ。
石井 メーカーが自ら市場の縮小を招いてしまう。自分の首を締めているってことですね。
佐藤 飲料の市場に限らず、似たような商品ばかり増えてきたなと横で見てて思うことは多いし。だから、僕らメーカーの使命はそうならないようにね、常にこう弓を引いてる状態で、ギリギリギリって、常にその臨極点まで弓を引き切る。対極から対極へ。なんて言うのかなあ、メリハリは必要なんじゃないかと。
石井 うんうん。じゃがいも心地もあればカラムーチョもある。対極ですね。
佐藤 ファッションでもそうだし、環境問題で電気自動車ばっかりにしようとしてるけど、ほんとにそれでいいのか。
石井 最近は軽自動車人気もすごいですね。
佐藤 そう、軽自動車になって、EVになって。各社DNAにしてた、自分たちらしさのシンボルみたいなスポーツカーの存在はどこ行っちゃうんだと。それは決して、自動車を楽しむって観点に立つと、いいことばかりではない。だからそのへんのところはメーカー側が考えなきゃいけない、っていう思いがあるけどね。
石井 僕らも消費者としてコンビニに行くじゃないですか。そうするともうほぼいまPB(プライベートブランド)がずらっと並んでいて、問題はないんですよ別に、それで事足りるんだけど、ちょっとだけ寂しいっていうか。それって古いんですかね?
佐藤 いや、それはもうまさしくノンブランド化してるわけだよね。アパレルもいま苦労している話をよくきくけど、なんでも無地のTシャツだけでいいんじゃないか、みたいなことと似たようなね、状態を引き起こしてたりするし、それは消費活動にとってはどうなんだろうと。
石井 若い人たちって、もう車も軽で十分だしファッションも別に無地のTシャツがあればいいやみたいな、感じなんですかね?ここに居る若者はどうですか?
小林 僕は若者でいいっすか?言わせてもらうと、「で」いいやじゃないですよね。
宮崎 うんうん。
小林 無印「が」いいと思って買ってるし、PBの中でもこのPB「が」いいと思ってるし、ダサいやつはダサいと思ってるから。
石井 まあそうだよね、これ「が」いいということですね。
小林 なんかその、画一的なもので特に違和感なく洗脳されたように暮らしてるという若者像を持たれているならば断固として違うし、むしろそれどころか、そういう社会だからこそ、自分を表現するものしか買いたくないとかって思ってる人もどんどん増えてるし、宮崎くんとかってまさにその代表例ですけど。
宮崎 ぼ、僕ですか。
佐藤 もっと反逆しないと。俺らの欲しいのはこんなんじゃないんだあ!って言って自己主張しないと、あるパイの中に収められていっちゃう感じがしてしょうがないなあ。
石井 でもそれは「草食」みたいな言葉で片付けちゃうと、なんか本質を見失うような気がしていて。あの、最近の動きはほんとに面白いなって思うんですよ。だってみんな、下手すりゃ水でいいって言い出してるでしょ?僕も思ったりするんですよ、もう味要らないとか、お茶すら要らないみたいな。そうなってるときでも、「あ、でもさ、カラムーチョって無くなったらすごく寂しいじゃない?」とは思う。そこにはなんかきっと、存在意義はきっとあって、それをどういうふうに突けば、これがセンターに行くのかなっていう、それはすごく難しい課題。
小林 水でいいとかって思うときあるんですか?
石井 俺もう水よ、飲んでんの。
小林 でも確かにジュース飲まないなみんな、周り見ても。たまーにコーラを飲みたくなるときってのはあるんだけど、でも本当にたまに。
佐藤 それはねえ、果汁100%から、つぶつぶオレンジから、苦いものから、旬でおいしいものを楽しむだとか、いろーんなものがあったから、俺はあれが好きこれが好きとかさ。コーラはすげえ刺激があってカーッてくるとか、いや似てるけどジンジャーエールのほうがいいとかさ、いや俺はドクターペッパーだとかさ、っていうのが「好み」だったような気がするんだよね。それがいまやもうみんな「水系」「お茶系」でいいんじゃない?ってひとくくりに言われちゃってる気がしてさ。
石井 する、すごくするそれは。
佐藤 だろ?それは違うと言わないと。ブランドの多様さ多彩さじゃなくて、大きさだけを競う時代になっちゃってるんだよ。その中にお客さんが入れ込まれて、そこで飼い慣らされちゃってる感じがしてね。っていうのは古いオヤジの意見かもしれないけどね。もっとこう、暴れたり戦いまくる市場になってないと。いまはなにかひとつヒットしたら各社がみんな同じような商品を出すから。
石井 そうですね。一見いろいろあるようでいて、逆に選択肢をなくしてる。
佐藤 「ものの流出入」ってのはさ、昔はあったよ。先週の昨日なに飲んでた?っていうのをよく調べてみると、酒飲んでたと。でも今週のいまはジュース飲んでる、とか。違うジャンル、違うところからいろいろこう流出入があって、それで楽しめるみたいなところがあるんじゃないのかなと。ずっと水でずっとお茶だったら、2週間前も昨日も全部同じになっちゃうから刺激がなくなっちゃうんじゃないの?ねえ平野そんなことない?
平野 や、そうですね。
石井 ほんとですかあ?ほんとのこと言ったほうがいいよ。俺はちょうど真ん中にポジショニングしてるんで。
佐藤 ばかやろう!真ん中じゃないだろう!
石井 俺そんなに章さん側でもないのよ。いいとこにいるから。どっちもわかるよ。
佐藤 なーに言ってんだよ。ゲンちゃんだってもう57、8になんだろ?
石井 なってないっすよ!いま51ですよ。
佐藤 あ、51。ははは!
石井 57、8って・・・そうねえ~。あれ、章さんいまいくつですか?
佐藤 俺62だよ。
石井 あっ、俺初めて会ったときじゃあまだ50いってなかったんすね。
佐藤 なに言ってんだよあんときはねえ、初めて会ったのは2005年だろ?だから15年前だから・・・47とか。
石井 40代だったんすか!?あれで!?
石井 おっかね~あの40代。怖っ。すごいっすね章さん全然変わってないですね。
佐藤 変わってないだろぉ。
石井 そうかあ、40代だったのかあ。
佐藤 とにかく僕らの若いときは、あたらしいカテゴリーを作ろうとか、いままであるものなんてクソ食らえと言って対抗勢力を作るのが若者なんだと。
石井 でも俺はこっちの味方でもあるから。
佐藤 いまなに人気投票やってんの!?
石井 でもほら、いまやものがあり過ぎるっていうか、その対抗軸ももう出尽くしちゃってる感じもしなくもないんですよね。
小林 まだないなら俺が作る!っていう時代のやり方とは違う反抗の仕方をしてると思いますね。ミクスチャーの時代ですいまは。あっちとこっちとこっちのやつを組み合わせるとまた全然違うのになるってことを延々と実験して、創造的破壊を繰り返してくっていうのがこれからだし・・・
石井 君らのやり方でしょ、いや良いんじゃないかなあと思うよ。ほら、おっさんたちの時代は、基本的にカウンターを当てればいいっていう結構単純なところがあったじゃないですか。でもいまはカウンターの当てどころがないんだもんね。
佐藤 まあね、なるほど。うまいこと言って中和するね。
小林 カウンターじゃなくて、ミクスチャーして全然違うものにするっていうポストモダン的な感じだと思うんですけど、それがなんか、ありものでごちゃごちゃやってるっていうふうに上の世代には見えちゃうのかもしれない。
佐藤 いや、カウンターでもミクスチャーでもなんでもいいんだよ。とにかく自分たちの存在を示さないと。
石井 うんうん。それは普遍だからね。
佐藤 自分たちの時代の寵児をつくらないといけない。
小林 それは思います。なんか、発信力というか、本当はしたいけど、なんか、燻ってんな俺たちって。
佐藤 こんな、こんな自由に商品開発してもいいって言われてんのにさあ、それが出てこないってのはさあ、マズいよなあ。
小林 なんか・・・だんだん説教みたいになって・・・
石井 カウンターじゃない作戦を考えればいいんだよお。ほんとそうだと思うよ。俺が全く意味がわからない売り方とかでもいい。なんかそれで火が点いたって言われたら負けを認めるし、俺たちが・・・いや俺は章さん側ってわけでもないけど、俺らが理解できるようなものじゃダメなんじゃないかなって気もするんだよね。でもね~うちの社員もそうなんですけど、金は出すから好きなことやれと、言うとねえ、できないんですよ。
佐藤 そうだよね。だから「ダメ!」って言ってたほうがいいんじゃないの?(笑)
石井 章さんはたまにはコンセプターと組んでやってみようとは思わないですか?
佐藤 うーん、ないね。いっつも起点になるのはさ、ゲンちゃんとかさ、アートディレクターからになっちゃうから。どうしても俺の発想が。
石井 はい、はい。
佐藤 コンセプターからってことはないんだよ、それは俺は自分で考えたいから。コンセプトを作って「おーいゲンちゃーん」になっちゃうからさ。コンセプトワークはできちゃうからな、必要ないんだよね。あんな話こんな話を壁打ちをしながらさ、「とにかく一枚画で作ってみてよ」みたいな。そうすると「まーた始まったよ」ってね(笑)。まあだけど、その「頼むよ!」っていうのの頼み手が、俺じゃなくて小林がカラムーチョでって門を叩いたら、やっぱできてきちゃうっていうのはすごいとこだね。昔のよさと、若者たちの気質をうまく繋いでる感じっていう。うまくまとまってるねえこれ。
石井 ありがとうございます!
佐藤 そういうことだろ!
石井 そういうことです。それが欲しかったっす。
佐藤 そうだろ~やっと出たよこれ~。
石井 また仕事増えちゃうな〜。
佐藤 そういうことを言ってほしかったと。OK?もういい?じゃ、落ち着いたらメシでも行こうよ!
石井 ぜひぜひ!ありがとうございました!
–– 「自分たちの時代の寵児をつくる」ずしりと重い言葉でした。送り出して安心してちゃダメだよ、ムーチョブランドはこれからが勝負だよ、と発破をかけられた思いです。
第3回はスコーンの話、マーケティング部のこれから、湖池屋さんからの逆取材など、続きます。
>>> 第3回「KOIKEYA PRIDE」 |